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「公開ワークショップ 話そう!広めよう!食べるだけじゃない!?こども食堂で起きていること」in東京 開催レポート

全国47都道府県で実施している「公開ワークショップ 話そう!広めよう!食べるだけじゃない!?こども食堂で起きていること」、第13回目の開催地は東京都。2023年12月6日、あらかわ子ども応援ネットワークの主催、荒川ボランティアセンター、かつしかボランティア・地域貢献活動センター、こども食堂がるまる、東京ボランティア・市民活動センターの協力により、サンパール荒川にて行われました。

今回は、主に荒川区、足立区、葛飾区でこども食堂を運営されている方々が参加。こども食堂に関わる方の年齢層や職業が幅広く、都市部らしい運営の様子が感じられました。

それでは、今回も登壇者のみなさまが実際に経験したエピソードをもとに語られた、「食べるだけじゃない」こども食堂の魅力をご紹介します。

講堂にいる人たち

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その子らしさを引き出す、こども食堂

本ツアーで実施するワークショップでは、こども食堂の運営者のみなさまに、1人ずつ     「やっていてよかったと感じるエピソード」「忘れられないエピソード」を伺っています。どのエピソードも、ハッとさせられたり、心温まったりするものばかり。特に印象的だったエピソードを抜粋してご紹介します。

学びに寄り添い、未来を拓く

こどもの居場所 in まちや(荒川区)  林志げ子:

こども食堂を始めて8年になりますが、コロナ禍の頃から周囲に不登校の子が増えてきているように感じます。学びは夢を広げてくれる大切なもの。私たちは、不登校の子どもへの勉強のサポートにも取り組んでいます。とある不登校気味だった男の子は、中学3年生になり、受験を意識し始めると、一気に変わりました。受験に向けて自分も何かやらなくてはと思ったようです。初めはまず数学から。続いて英語を私たちのスタッフが教え、彼も必死に頑張りました。その結果、無事に都立高校に合格し、現在は大学受験を目指しています。そして、そんな彼の姿を横で見ていた不登校の女の子もまた、大きく成長しました。彼が勉強しているといつの間にか横に来るようになり、自分から「一緒に勉強したい」と話してきたのです。その子は数年前から来ていたものの、それまで話をすることはほとんどありませんでした。それから英語の勉強を重ね、英検2級を取得するほどになりました。現在は高校生になり、以前の姿からは想像できないぐらい明るい表情でたくさん話もしてくれます。学びの力を実感する印象的な出来事でした。

ワインを飲んでいる男性

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こどもの居場所 in まちや(荒川区) 林志げ子さん

子どもも大人も、互いに寄り添い合う場所 

みとちゃん食堂(葛飾区) 今西利香さん:

私たちのこども食堂はコロナ禍から始まり、もうすぐ丸3年を迎えます。以前、学校薬剤師をしていた際に、朝ごはんを食べない子どもが多いことが気になっていました。子どもたちに朝ごはんを食べてほしいと、夕飯の提供やパントリーの他、朝ごはんの活動も行っています。印象に残っているのは、初回から来ていた母子家庭の親子です。お母さんは自分のごはんを子どもにわけたり、フードパントリーでは子どもの好物を選んだり、いつもお子さん第一。娘さんの方もだんだんとお母さんを気遣う姿が見られ、お互いを思いやる姿に心が温まりました。その後引っ越してしまったのですが、今でもこども食堂のLINEで繋がっています。夏にバスで遠足に行った際には、LINEに流れてくる写真を見て、「一緒に遠足に行った気持ちになった」とメッセージをくれたこともありました。その子はいつも笑顔で、スタッフにもたくさんハグをしてくれていました。今思うと、親子を支えているつもりが、こちらの方が支えられていたのですね。こども食堂をやっていてよかったと思える大切なエピソードです。

カーテンの前で電話している女性

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みとちゃん食堂(葛飾区) 今西利香

苦手に寄り添い、やりたいを応援

あだち子ども食堂たべるば(足立区) 川野礼さん:

中学の頃から不登校で4年間引きこもっている16歳の男の子がいました。こども食堂に来ても話さず、返事は首を振るぐらい。食事もほとんど食べてくれませんでした。やがて関係を築けないままに、コロナ禍で活動は自粛に。この時に、他の子たちと同時にiPadを配布したことが、彼の居場所を見つけるきっかけになりました。みんなでオンラインゲームをやったときのことです。飛び抜けてゲームが上手な彼に、あれは誰だろうと注目が集まりました。そこから徐々に関係構築が始まり、会話もできるようになった頃、彼がふと「高校に行きたい」と漏らしたのです。それからは勉強の支援もし、無事に定時制高校に合格することができました。その後もまた不登校にならないよう寄り添いながら、関係は続いています。高校卒業まであと1年になり、次に気になるのは就労です。まだ人とのコミュニケーションが苦手なものの、食堂の支援者の元で事務のアルバイトをして頑張っています。卒業まであと少し。これからも近くで見守っていきたいと思います。

カーテンの前に立っている女性

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あだち子ども食堂たべるば(足立区) 川野礼さん

誰にとっても居場所になる、それがこども食堂

登壇者の発表を聞いた後は、会場のみなさんから感想を伺いました。その一部をご紹介します。

――自分自身も子どもたちの成長に支えられて活動していることを改めて感じました。

――こども食堂は「目的を求められない、ただいるだけでいい場所  」という言葉が響きました。

――今後、こども食堂同士のネットワークが作られていくといいなと思いました。

――利用者に対しどこまで支援できるか、また支援すべきなのかの判断の難しさを感じました。

こども食堂を体験しよう!

今回のレポートでは、不登校の子どもたちに関するエピソードをお届けしましたが、子どもたちだけでなく、高齢者の居場所にもなっているというエピソードも。そのほか、子どもが主体となったイベントづくりの様子や、参加者だった子どもが現在はスタッフになっているというエピソードなど、それぞれの取り組みに心温まる時間となりました。レポートを読んでくださった方も、「食べるだけじゃない」を体験しに、ぜひお近くのこども食堂に足を運ばれてみてはいかがでしょうか。

東京都でこども食堂の活動に取り組まれているみなさん、ワークショップへのご協力を誠にありがとうございました。

白い壁の前に立つ人々

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【開催概要】

「こども食堂公開ワークショップ 『話そう!広めよう!』~食べるだけじゃない!?こども食堂で起きていること」in東京

開催日:2023年12月6日(水)18:30-20:30

開催場所:サンパール荒川 

主催:あらかわ子ども応援ネットワーク、全国こども食堂支援センター・むすびえ 

協力:荒川ボランティアセンター、かつしかボランティア・地域貢献活動センター、こども食堂がるまる、東京ボランティア・市民活動センター 

登壇者:川野礼(あだち子ども食堂たべるば/足立区)、宮本明彦(こども食堂がるまる/足立区)、林志げ子(こどもの居場所 in まちや/荒川区)、中谷靖(子どもの未来塾/荒川区)、荻田佳奈枝(ちびっこどんぶり/足立区)、今西利香(みとちゃん食堂/葛飾区)、春川美桜(わっはの庭/葛飾区)※こども食堂名五十音順

ファシリテーター:六鹿篤美(全国こども食堂支援センター・むすびえ)