未来への懸け橋、こども食堂にあふれる笑顔と希望
「公開ワークショップ 話そう!広めよう!食べるだけじゃない!?こども食堂で起きていること」in 宮城 開催レポート
全国47都道府県で実施している「公開ワークショップ 話そう!広めよう!食べるだけじゃない!?こども食堂で起きていること」、第14回目の開催地は宮城県。2024年1月31日、みやぎ生協文化会館ウィズ会議室にて開催されました。
現在宮城県内にあるこども食堂の数は約120カ所。月に2、3件程度は新規開設の相談が寄せられているそうで、もともと企業や社会福祉法人として事業を行っていた団体が、こども食堂を開設するケースも多いとのことです。また、企業や団体がそれぞれに行っていた社会課題を解決する取り組みの中で、こども食堂に出会い、活動を支援するようになった例も目立ちます。
こども食堂の活動には、こども食堂を運営する人々だけでなく、それを応援する人々の存在が欠かせません。より多くの方に「地域の居場所」としてのこども食堂の役割をもっと知ってもらい、応援する人や立ち上げようとする人たちを増やしていきたい。そんな想いで今回のワークショップを開催しました。
当日は主催者の呼びかけに、宮城県の各地から32名が、さらにオンラインでも14名が参加。こども食堂の運営者の方3名に加え、こども食堂を応援する企業・団体の方3名にも登壇していただき、実際にこども食堂で出会った人たちとの印象深いエピソードや食堂の魅力について語っていただきました。
あたたかな気持ちがうまれてくる、 それがこども食堂
本ツアーで実施するワークショップでは、こども食堂の運営者のみなさまに、1人ずつ「活動していてよかったエピソード」を伺っています。今回は、こども食堂の運営者の方 に加え、こども食堂を応援する企業・団体の方からも、こども食堂を応援する想いをお話いただきました。どのエピソードも、気づきがあったり、心が温まったりするものばかり。そのうちいくつかを抜粋してご紹介します。
時を超えて受け継がれる支援の輪
Pocci! (株式会社SKトレーディング)(仙台市) 本田みのりさん:
私たちは廃棄物処理業を主業務としていますが、地域社会の課題解決に寄与し、地域の発展を目指すこともミッションとしています。その一環として行っているのが、集めた古紙のリサイクルを通じ、地域で頑張る子どもたちを応援する「Pocci!(ポッチ)」という取り組みです。こども食堂をはじめとする地域で活動する団体と、地域の子どもたちを応援したいという企業をつなぐプラットフォームのような存在になれたらと思い、活動しています。
以前、あるこども食堂に行ったときに出会った女子高校生の話がとても心に残っています。彼女は小学生のころからそのこども食堂に通っていて、高校生になった今は県外の高校に通って寮生活をしているのですが、月に一度地元に戻ってくるときに合わせてこども食堂にも顔を出し、今度は自分が支援する側として手伝いをしているそう。
こども食堂は小さなこどもが来る場所というイメージを持っていたのですが、年齢を重ねてもなお自分の居場所であり続けてくれる、素晴らしい場所だなと感じました。家以外に定期的に帰ってきたくなる場所があるというのは幸せなことですし、その環境を守る手伝いをさせてもらいたいと思いました。
希望の連鎖が生まれる場所
しおかぜ食堂(松島町) 北条久也さん:
定年退職後、行政の家庭支援の場で働いていた際に、行政の手が行き届かない人がいることを目の当たりにしてきました。その人たちに向けて何かできないかと考えて立ち上げたのが「しおかぜホーム」です。当初はこども食堂ではなく、子育てに困難を抱えている人たちに向けて、地域の力で手助けしていこうと活動を始めたのですが、こども食堂ネットワークの方とつながりが生まれたことで、お弁当を配付する形式でのこども食堂の活動が始まりました。
お弁当を受け取りに来る方の中に、一人で3歳の子どもを育てている20代の若いお母さんがいました。当時は日々の暮らしで精一杯の様子で表情がとても暗かったのですが、回を重ねるたびに会話を交わすようになり、3年目を迎えた今では向こうから声をかけてくれるようになりました。そんな彼女が話してくれたことが忘れられません。「今はこういう形で支援してもらっているけれど、いつかは自分も支援する側にまわりたい」。その言葉がとても嬉しかったです。
生活に困難を抱えている人は、悪いスパイラルに巻き込まれてしまうとなかなか抜け出せなくなってしまうことがあります。ですが、何かのきっかけで前向きな気持ちを取り戻せれば、希望を感じられるようにもなるのです。プラスが循環していけば、地域はもっと暮らしやすくなると思っています。しおかぜ食堂が地域の中で希望の連鎖を生むプラットフォームになっていけたらと願い、活動を続けています。
小さな贈り物が紡ぐ絆
スマイルむさし(登米市) 千葉純子さん:
2018年から、子どもの居場所づくりや多世代交流の場をつくる目的でこども食堂を始めました。以前は集まった人たちと一緒に食事をしていましたが、コロナ禍後はお弁当の配付に切り替え、毎月1回開催しています。
お弁当の配付になってから、ある男の子が毎月来るようになりました。話をしてみると中学3年の受験生とのこと。「勉強がんばってね!」など短い会話ですが、毎月言葉を交わすようになりました。あるとき、その男の子がこども食堂にやって来て「いつも美味しいお弁当をありがとう」と包みを差し出したのです。なんとそれは、修学旅行のお土産でした。中学生が修学旅行に持参してよいお小遣いには限度があるはず。許可された少ないお小遣いの中から私たちのために選んでくれたこと、楽しい旅行中に私たちのことを思い出してくれたことが嬉しいなと胸が熱くなりました。
これまでにも、幼稚園児の女の子が「ありがとう」とお手紙を書いて持ってきてくれたことがあり、子どもたちにとって居心地の良い場所になりつつあるようで嬉しいです。子どもたちはもちろん、誰もが気軽に足を運べる地域の交流の場になれたらという想いで活動しているので、さらにいろいろな方に来ていただけたらと思っています。
こども食堂は未来につなげる中継地点
こども食堂を運営している方々の声を受けて、参加者のみなさんで数人ずつのグループに分かれてディスカッションを行いました。その一部をご紹介します。
――「食べる」ということを通じてだから心が開かれるような気がする。身体の健康だけではなく、心の健康や皆が笑顔になるというところにこども食堂の価値を感じる。
――こども食堂は、子どもたちの成長のきっかけを提供できる場であり、子どもたちの色々な可能性につながっていると感じた。
――「こども食堂を応援する」という目的があったからこそ、これまで接点のなかった企業や団体の間に応援の輪が生まれたのだと思う。こども食堂という場があることで、いろいろな人やコトにつながって、次のステップに展開していくきっかけになっていると感じた。
――今は地域とのかかわりが少なくなってきている。だからこそ、地域の大人とかかわれる場所の存在は、子どもの成長へ大きな影響を与えていると思う。コミュニケーションが希薄になっている部分を、こども食堂で少しでも補い、子どもたちの可能性あふれる将来につなげていけたらと思っている。
こども食堂で可能性を切り拓こう!
このほかにも、こども食堂が地域の中で欠かすことのできない存在として、人々の中に溶け込んでいると感じる、あたたかいお話を聞くことができました。また、こども食堂が子どもだけではなく、多くの人たちの可能性を切り拓く場所になっていることも参加者の心に残ったようです。
このレポートを読んでくださった方も、「食べるだけじゃない」を体験しに、ぜひお近くのこども食堂に足を運んでみてくださいね。
宮城県でこども食堂の運営に尽力されているみなさん、ワークショップへのご協力を誠にありがとうございました!
【開催概要】
「公開ワークショップ 話そう!広めよう!食べるだけじゃない!?こども食堂で起きていること」in宮城
開催日:2024年1月31日(水)14:00-16:00
開催場所:みやぎ生協文化会館ウィズ会議室(宮城県仙台市)
主催:みやぎこども食堂ネットワーク、 全国こども食堂支援センター・むすびえ
登壇者:本田みのり(株式会社SKトレーディング/仙台市)、坂本萌歩(株式会社高速/仙台市)、北条久也(しおかぜ食堂/松島町)、千葉純子(スマイルむさし/登米市)、佐藤春(宮城県社会福祉協議会/仙台市)、佐藤寛子(亘理町社会福祉協議会・子ども食堂わたりんりん/亘理郡)
※こども食堂名・企業名・団体名五十音順
ファシリテーター:出原道恵(全国こども食堂支援センター・むすびえ)