青森県

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こども食堂でつながる、人と人、そして気持ちと気持ち

あおもりこどもの居場所ネットワーク設立セミナー~こども食堂10周年記念全国ツアーINあおもり~ 開催レポート

こども食堂10周年記念全国ツアー「公開ワークショップ 話そう!広めよう!食べるだけじゃない!?こども食堂で起きていること」。

全国47都道府県でワークショップを開催しよう!という本ツアーの、第2回目の開催地は前回に引き続き東北地方から、青森県。

2022年8月29日、県民福祉プラザ4階 県民ホールにて開催しました。

こども食堂の数が徐々に増えてきてはいるものの、新型コロナウイルスの影響で会食を休止したままであったり、食料配付のみで会食ができていない食堂も多く見られる青森県。また、こども食堂の雰囲気がわからずにはじめの一歩を踏み出せない方や、不安を抱えたままスタートしている団体もあり、立ち上げをスムーズに行えるような支援も課題になっています。

現在開催しているこども食堂は、どのようにして開催にこぎつけたのでしょうか。今回登壇してくださった団体の代表者のみなさまが、立ち上げ時の難しさを乗り越えたエピソード、また気持ちの移り変わりについて語ってくれました。

人のありがたさが見えてくる! こども食堂

本ツアーで実施するワークショップでは、こども食堂の運営者のみなさまに、1人ずつ「活動していてうれしかったエピソード」を伺います。その後、参加者のみなさんに感想をお聞きしました。

どのエピソードも、ハッとさせられたり、心温まったりするものばかり。そのうちいくつかを抜粋してご紹介します。

たくさんの人の好意でつながったご縁

みんなの食堂アエ~ル(青森市) 加藤和子さん:

始めた当初、「こども食堂に関心を持っている人なんているのかな」と半信半疑でしたが、畑で採れた野菜を持ってきてくださったり、スーパーで使えるサービス券をためてくださったり…スーパーの前で募金活動をしたときには、見知らぬ年配の方が「ちょっと来て!自分で運べないけど持って行って」とわざわざ10キロのお米を買って寄付してくださったこともありました。活動を始めてから応援してくださる方がたくさんいると知り、いろいろな方と知り合えるのが嬉しいです。

もともと給食の仕事をしていた関係で、なにか子どもたちのためになるならとお手伝いを始めたのですが、振り返ってみれば子どもたちのためにというより自分のためになっているのを感じます。

みんなの食堂アエ~ル(青森市) 加藤和子さん

自然と確立した子どもとお母さんの居場所

「みんなの食堂」おいでえーる(弘前市) 井澤淳さん:

開設した当初、月1回の開催日には町内の高齢者が多く、子どもは数名しか集まりませんでした。しかしコロナ対策で人数を分散させるため、活動日を月2回に変更したところ、高齢者が集まる日と、親子が集まる日が自然とわかれるように。現在はお母さんたちの口コミで来訪者が増え、20名ほどの子どもたちが来てくれるようになりました。お母さんにべったりだった子がしだいにスタッフと打ち解け、その間にお母さんは子どもと離れて自由になる時間が生まれることも。コロナがきっかけで回数を増やした結果でしたが、子どもの居場所とお母さんの居場所の両方が自然に確立したように思います。「担い手から支え手へ。食育を通じて地域の活性化と共生を目指す」という芯は持ちつつ、これからも柔軟にさまざまな施策を講じていきたいと思っています。

「みんなの食堂」おいでえーる(弘前市) 井澤淳さん

誰かと組むことで道は切り拓ける

ちょうじゃこども食堂( 八戸市) 工藤克祥さん:

コロナ禍で会食ができなくなって食材配付に切り替えた際、これまで来てくれていた人が集まらず、用意していた20世帯分の食材に対して受け取りに来たのは3世帯だけでした。でもその後、八戸学院大学の佐藤先生と活動を行ったところ、次の食材配付の際には100世帯が来てくれました。「一人では手が届かないところにも、誰かと一緒に取り組むことで必要な人たちに情報が行き届くのだ」という実感を得ました。また、活動が広く知れ渡ることで地域の人からの寄付が増えたのも驚きでした。他人のために時間とお金、労力を割こうと思ってくれる人たちがこんなにもいる!そういう人たちに支えられているからこそ、活動が続けられているのだと感じています。

ちょうじゃこども食堂(八戸市) 工藤克祥さん

 「会いたいから」が原点

憩いの広場ここまる(五所川原市) 川村沙織さん:

あるとき訪れた3人家族。小学生のお子さんはじっとしているのが苦手で、はじめはみんなとゆっくり座って食べることができませんでしたが、回を重ねるごとに一緒に食べられるようになっていきました。お母さん自身も子育てでストレスを抱えていたようで…コロナ禍の影響で月1回の食材やお弁当配付に切り替えなくてはならなくなったときも、「1カ月に1回でも川村さんに会える」と喜んでくれました。支援してくださる方も「あんたに会いたいから寄付する」と言ってくださいます。相手から求められると嬉しいし、誰かに話すというのは大事な時間だなと思います。実は自分自身、障害のある子どもを育てる中で孤独を感じ、居場所を見つけるためにこども食堂を始めました。最初はなかなか人も集まらず、気持ちがへこんだこともありましたが、今はやっていてよかったと思います。休んじゃいられない、とも。

憩いの広場ここまる(五所川原市) 川村沙織さん

こども食堂は、人と人が出会う場所

こども食堂の立ち上げ時の想いや継続してきたからこそ見えてきたものについて、実際の運営者の声を聞き、参加者のみなさんから感想や質問が寄せられました。一部をご紹介します。

――やりたいという気持ちと来てくれる人がマッチングするのは難しいことなのだと思いました。それでもやり続けることが大切なのだと。継続する力の素晴らしさを感じました。

――やりたい、という強い想いがすごいな、と思いました。

――こども食堂の運営にはいろいろな方がかかわっているのだということが分かりました。

――これまでこども食堂について名前は知っていましたが、活動内容まで詳しく知りませんでした。自由にかかわる人の居場所を見つけていく取り組みは、将来行政にも波及していくといいと感じています。

また、はじめたころはどのような情報発信をしたのか、という質問には登壇者から「市の広報を活用する」「自治会の回覧板に挟んでもらう」「掲示板に貼る」などの回答が寄せられました。

こども食堂でつながろう!

「支援してくれる人なんているのだろうか」という不安が「やってみたら支援者が増えていった」「やってみてうまれる人とのつながりが嬉しい」に変化した経験を話してくださった登壇者のみなさん。

みなさんがそれぞれにこども食堂の立ち上げ時を振り返り、これからの決意を新たにする、笑顔あふれるひとときとなりました。

青森県でこども食堂の運営に尽力されているみなさん、ワークショップへのご協力を誠にありがとうございました!

【開催概要】

あおもりこどもの居場所ネットワーク設立セミナー~こども食堂10周年記念全国ツアーINあおもり~

開催日:2022年8月29日(月)13:00-16:00

開催場所:県民福祉プラザ4階 県民ホール(青森県青森市)

主催:社会福祉法人青森県社会福祉協議会、特定非営利活動法人全国こども食堂支援センター・むすびえ

登壇者:川村沙織(憩いの広場ここまる/五所川原市)、工藤克祥(ちょうじゃこども食堂/八戸市)、加藤和子(みんなの食堂アエ~ル/青森市)、柿崎章(みんなの食堂アエ~ル/青森市)、井澤淳(「みんなの食堂」おいでえーる/弘前市)

※こども食堂名五十音順ファシリテーター:湯浅 誠(特定非営利活動法人全国こども食堂支援センター・むすびえ理事長)