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「公開ワークショップ 話そう!広めよう!食べるだけじゃない!?こども食堂で起きていること」in 沖縄 開催レポート

全国47都道府県で実施している「公開ワークショップ 話そう!広めよう!食べるだけじゃない!?こども食堂で起きていること」。第17回目の開催地は沖縄県。2024年5月15日、沖縄県社会福祉協議会の主催により、沖縄県総合福祉センターにて開催されました。

沖縄県では令和5年10月時点で316カ所の子どもの居場所(こども食堂)があり、多くは那覇市を中心とした沖縄本島中南部の市部に集中しています。むすびえの調査によると、充足率(校区実施率)は56.7%で全国トップです。

今回は、2023年度に沖縄県と大阪府堺市のこども食堂にご協力いただいた「こども食堂の参加者の変化を捉える定量調査」についての報告も行いました。本調査は、こども食堂に訪れる子ども・保護者の変化を数字で捉えるむすびえとしては初めての試み。延べ1700人から回答を得ることができました。

調査に協力してくださったこども食堂運営者のみなさんが実際に経験したエピソードをもとに語られた、「食べるだけじゃない」こども食堂の魅力をご紹介します。

建物の前の椅子に座っている人たち

低い精度で自動的に生成された説明

みんなの思いが集まる、それがこども食堂

本ツアーで実施するワークショップでは、こども食堂の運営者のみなさんに、1人ずつ「やっていてよかったと感じるエピソード」「忘れられないエピソード」を伺っています。どのエピソードも、ハッとさせられたり、心温まったりするものばかり。特に印象的だったエピソードを抜粋してご紹介します。

いつか届くと信じて声をかける大切さ

こども食堂ありんくりん(今帰仁村) 仲宗根常子さん:

こども食堂の運営で心がけているのは、子どもに声をかけ続けることです。初めて会った大人と打ち解けるのに、時間がかかる子もいます。たとえ最初は反応が薄くても、諦めずに話しかけることを大切にしています。あるとき、偶然イベントに立ち寄ってくれた地域の子どもがいました。それ以来、毎月来てくれるようになったものの、挨拶をしても笑顔がなく、人見知りなのか、話しかけてもうなずくだけでした。変化が訪れたのは、半年ほど経ったとき。イベントを開催した際に、率先して大人に話しかけて、手伝いをしてくれました。笑顔もたくさん見ることができて、終わった後、スタッフ同士で喜んだことを覚えています。振り返ってみると、車で送迎をするときにたくさん話しかけていたことが、距離が縮まった理由かもしれません。その後、その子が退屈していないか心配していたのですが、こども食堂で調理をしたり、お弁当を詰めたり、会食の準備をするのが楽しいと話してくれました。こども食堂で自分の出番を見つけて、誰かの役に立っている達成感を味わってくれているのだとしたら嬉しいです。

人, 持つ, 女性, 電話 が含まれている画像

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こども食堂ありんくりん(今帰仁村) 仲宗根常子さん

母親の言葉から感じる父親の不在

馬天おいしい会(南城市) 渡辺正さん:

私は、こども食堂で120人分の調理を担当しています。その原点にあるのは、TVドラマ制作の仕事をしていた頃に、ロケ先でスタッフ200人分の味噌汁を作っていたことです。でも、自分の家庭の家事育児にはほとんど関わることができていませんでした。こども食堂に携わっていて感じるのは、家事育児は女性がやるもの、という価値観が現在でも根強く残っていることです。それは、このイベントの冒頭で報告のあったアンケートに、私たちのこども食堂が参加したときにも感じました。アンケートに、「こども食堂がある日は、心と時間に余裕ができて、子どもたちとじっくり向き合うことができる」と書いてくれた3人の子を持つお母さんがいたのです。嬉しい反面、父親は何をしているのだろうと、複雑な思いがしました。昨日までは、輪島市で炊き出しのボランティアに行っていましたが、そこでも、ご飯を取りに来るのは女性がほとんど。ある調査では、女性が7時間も立ちっぱなしで炊き出しをしていた避難所もあったそうです。食事は、いざ災害が起こったときにも、真っ先に解決しなければならない課題の一つ。そういう点でもとても大事なことです。私も男性の1人として、男性が仕事だけではなく、生活の場面でもっと活躍することを願っています。

カーテンの前に立っている男性

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馬天おいしい会(南城市) 渡辺正さん

何もなくても立ち寄れる場所、だからできること

こどもみらい食堂(宮古島市) 新城宗史さん:

私たちの団体は自治体からの委託を受け、児童館を運営しています。こども食堂も自治体の協力を得て、児童館で開催しているのですが、始めたときは、児童館で遊んでも食べずに帰ってしまう子どもがほとんどでした。理由をたずねたところ、母親から「あそこはお金がない子がご飯を食べるところだから、行ってはいけない」と言われていたことを知ったのです。この言葉を聞いて、スタッフでこども食堂のあり方を再検討し、貧困対策ではなく、地域コミュニティの再生事業としてリスタートすることに。その効果はすぐに現れました。「誰でも、困りごとがなくても来ていい」という広報に変えたところ、参加者が30人から80人、130人と増え、現在では360食が30分でなくなるほどになりました。現在は、飲食組合の方が手伝いを申し出てくださり、毎回おいしいカレーを作ってくれています。コロナ禍には、給食がなくて食べることに困った兄弟が、30分かけて歩いて来たことがありました。一方で、野球やサッカーチームの練習の帰りに、ふらっと立ち寄ってくれる親子もたくさんいます。誰でも気軽に来られる場所だから、支援が必要な人も気兼ねなく訪れることができるのですね。支援のあり方について、考えさせられた出来事でした。

カーテンの前で話す男性

中程度の精度で自動的に生成された説明
こどもみらい食堂(宮古島市) 新城宗史さん

誰にとっても居場所になる、それがこども食堂

登壇者の発表を聞いた後は、参加者のみなさんで数人ずつのグループに分かれて、それぞれのエピソードを共有しました。終了後のアンケートから、一部のご意見を抜粋して紹介します。

――自治体の職員をやっていて、こども食堂への理解を深めたくて来た。地域での繋がりの大切さを改めて感じた。

――今後、こども食堂の経験を18歳~23歳ぐらいの青少年の自立支援の活動に繋げていきたいと考えている。こども食堂に来ている子どもたちとの交流が、青少年に良い影響を与えてくれることを願っている。

――こども食堂をオープンな場にすることで、支援が必要な人が気後れせずに来られるというメリットがあるのだと感じた。支援のあり方について考えさせられた。

こども食堂を体験しよう!

今回は、こども食堂に参加している子どもたちの変化についての調査報告から、実際にこども食堂で起きているエピソードまでを聞くことができる貴重な回となりました。調査では、参加者からのこども食堂への信頼感の高さが数字として現れましたが、その背景には、こども食堂の運営者のみなさんの日々の活動があることを改めて実感しました。レポートを読んでくださった方も、「食べるだけじゃない」を体験しに、お近くのこども食堂に参加してみてはいかがでしょうか。

沖縄県でこども食堂の活動に取り組まれているみなさん、ワークショップへのご協力を誠にありがとうございました。

人, 屋内, 建物, グループ が含まれている画像

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【開催概要】

「こども食堂公開ワークショップ 話そう!広めよう!~食べるだけじゃない!?こども食堂で起きていること」in沖縄

開催日:2024年5月15日(水)10:00-13:00

開催場所:沖縄県総合福祉センター東棟1階ゆいほーる 

主催:沖縄県社会福祉協議会、全国こども食堂支援センター・むすびえ 

共催:那覇市社会福祉協議会

登壇者:仲宗根常子(こども食堂ありんくりん/今帰仁村)、新城宗史(こどもみらい食堂/宮古島市)、渡辺正(馬天おいしい会/南城市)、玉寄文代(ほのぼのカフェ/那覇市)、波平正司(レアーズ食堂/読谷村)※こども食堂名五十音順

ファシリテーター:湯浅誠(全国こども食堂支援センター・むすびえ)