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可能性は無限大!こども食堂でできること

こども食堂10周年記念全国ツアー in徳島 開催レポート

こども食堂10周年記念全国ツアー「公開ワークショップ 話そう!広めよう!食べるだけじゃない!?こども食堂で起きていること」。

全国47都道府県でワークショップを開催しよう!という本ツアー、第4回目の開催地は四国地方、徳島県から。2023年1月15日、徳島合同証券株式会社本社ビルにて開催されました。

こども食堂数が急速に増加している徳島県。喜ばしい反面、それぞれの食堂では様々な課題が生じています。「こども食堂」という言葉から受ける誤ったイメージで、こども食堂に足を運ぶことをためらっている方が少なくないという、共通した悩み。他の食堂との違いに不安になる運営者…。そこで今回、自分たちの活動状況や喜び、悩みを紹介しあうことで見えてくる、こども食堂を核とした地域の未来づくりについて話し合いました。既存の食堂は自信を取り戻し、楽しく継続運営できるように、また興味・関心を持っている方には新たな食堂設立のきっかけとなることを願い、深く語り合いました。参加者たちの間で質疑応答も盛んに交わされ、有意義な会となりました。

続けてきたことで見えてきた! こども食堂

 徳島県ではこれまでの開催地とは趣向を変えて、各こども食堂の活動報告を主体に実施しました。その中から印象深いエピソードをご紹介します。

子どもにとっても親にとっても最高の居場所に

つるかふぇ(阿南市) 山田未沙紀さん:

「神より神」

「ここがあるけん、この地域の子でよかった」

この場に通う4年生の男の子が言ってくれた言葉は今でも忘れられない宝物です。県外に嫁いだ私は、知り合いがいない中での子育てで孤独を感じることが多くありました。地元に戻ってきたとき、「みんなで子育てをする雰囲気を作りたい」その想いで子育て交流スペースを作ったことからこども食堂の活動が始まりました。子どもたちの楽しんでいる姿を見るたびに、続けてきて本当によかったと思っています。

平日昼間は、学校に行きづらい子とその親御さんが過ごせる場としてもスペースを提供しています。自分の子だけを見ていると視野が狭くなりがちな親御さんにも、ここに来ていろいろな子どもがいるのを見てほしいと思っているからです。

今では子どもたちが口コミで友だちを呼び、たくさんの子どもが来てくれるのでスペースが狭くなってきたかな、と嬉しい悲鳴を上げています。

つるかふぇ(阿南市) 山田未沙紀さん

  「男3人未経験」からでも道は拓ける!

XOXOこども食堂(徳島市) 竹内昌夫さん:

料理を作ったことのない男性3人が、楽しそうだからと見よう見まねで始めました。当時は料理の腕を磨こうと、弁当屋さんに朝3時から3か月間修行に通ったこともあります。メディアで私たちの活動が紹介され、主婦のボランティアの方々が増えたため、実際に料理の腕を振るう機会はあまりありませんが、皆さんが手際良く作ってくださるので助かっています。

私自身、以前から生活に困っている方に食料品の提供などの支援をしてきました。彼らに声をかけてもこども食堂にはなかなか足を運んでもらえていない現状があります。こども食堂の形態で活動を始めてから支援いただく物資なども増えたので、引き続き物資の配達と両輪でこども食堂を運営していきます。

XOXOこども食堂(徳島市) 竹内昌夫さん

子どもも大人も「共に」に育っていく場所

自然派こども食堂(海部郡) 岩崎致弘さん:

子どもたちと一緒に作る自然派料理を提供しているこども食堂で、食材はローカル、オーガニックなものを選んで使っています。未来を創る子どもたちに最高のものを食べてほしいという想いから始めたところ、全国から趣旨に賛同してくださった方々が寄付をしてくださるようになりました。「教育」ではなく「共育」。「競争」ではなく「共創」。ご飯を作りながら食や世の中のしくみについて考え、共に育っていく環境を目指しています。

また、スケジュールやメニュー決め、当日子どもたちのケアなどを担ってくれているのが中学1年生のチームリーダー。「小さい子に包丁使いを教えたりするのは難しいけれど、アドバイスしたり見守ったりしながら一緒に料理を作るのは楽しい」と意欲的に参加してくれています。

自然派こども食堂(海部郡)岩崎致弘さんと中学1年生のチームリーダー

こども食堂は、分かち合う場所

各こども食堂の発表の後には、実際に食堂を運営する中での悩みや、活性化するためのアイディアについて質問や意見交換が活発に繰り広げられました。一部をご紹介します。

【どのように周知しているかを知りたい】

――広告費よりも食費にお金をかけたいので、ちらしは近隣のスーパーや知り合いの店に貼ってもらいますが、あとはFacebookやインスタグラムなどに情報を掲載しています。

――周知が行きわたると、想定より多くなる来訪者への対応も課題のひとつです。すべての来訪者に食事を提供したいので、あまり前からではなくSNSなどで前日にお知らせするようにしています。

【メニュー作りのポイントを教えてほしい】

――寄付された食材をベースに、地域の野菜や旬の物を取り入れ、食品ロス削減にも貢献できるように工夫しています。

――具材には徳島の伝統的な食材や地域のものを入れるようにしています。

――おうちで食べる食事とは違う特別感を出したいので、見た目も工夫するようにしています。

【貧困対策というイメージがまだあるが、どのように払しょくしていけばよいと考えているか】

――「こども食堂は行くところではないよ」と言われていた子が、今は中学生になってボランティアに来てくれています。長い間続けていき、外部の人から中が見えるようになれば理解が広がっていくのかもしれない。

――回を重ねることで周囲のイメージが変わることもあると思うので、徐々に伝わっていったらいいと思います。

――SNSやラジオに出演するときなどにイメージを変えられるような発信をしています。

【ご近所から子どもたちの声がうるさい、家の中で預かればよいのでは?と苦情が来ることがある。どう解決したらよいか】

――公園で遊んでいても近隣の家の方から苦情が来ることがありました。どうしてこの活動をしているのか、地域の中でなぜ必要なのかを訴えたところ、話を聴いてくださった方もいます。

――時間を決めるなど折り合いをつけるのも一つの手ではないかと思います。

――何か新しいことをやろうとするとトラブルがうまれることがあるが、チャンスととらえ、話し合える機会だと思うようにしています。お互いが腑に落ちるまで話をするようにしています。

【こども食堂で、スーパーで出る廃棄寸前の食材を安く引き受けるなどできたら、食材の確保ができるだけでなく、フードロスの問題も解決できる仕組みを整えていけるのでは?実際大型スーパーでは大量の食品が廃棄されているので、積極的に交渉してみてはどうか】

――食品ロス問題を子どもたちと勉強し、賞味期限が近いものを呼びかけて集め、地域の場所を借り管理させてもらっています。食品ロスに協力いただく、という趣旨で毎回50~100食程度用意し、取りに来てもらっていますが、これからは近くのスーパーにも呼びかけてみたいと思います。

【食事の提供を超えた取り組みについて】

――こども食堂でもっとできることを考えていく中で、商品づくりをしてはどうかと考えるようになりました。このような会でできたつながりでコラボレーションなどもできたらいいと思っています。食事の提供の枠を超えた取り組みも考えていきたいです。

――近隣のゆずの農家さんから提案があり、来年は商品を開発しようかと考えています。

こども食堂で可能性を広げよう!

それぞれの運営者が日ごろから考えていることなどをシェアし、意見交換を行ったワークショップ。運営する中で直面するさまざまな問題について、他の食堂の経験談から助言を得たり、こども食堂が解決できるかもしれない社会問題や、あらたな取り組みを考えたりすることができました。顔を合わせてつながることが強みになると実感できた時間でした。

徳島県でこども食堂の運営に尽力されているみなさん、ワークショップへのご協力を誠にありがとうございました!

【開催概要】

こども食堂10周年記念全国ツアー in徳島

開催日:2023年1月15日(日)13:00-16:30

開催場所:徳島合同証券株式会社本社ビル(徳島県徳島市)

主催:特定非営利活動法人徳島こども食堂ネットワーク

https://tokushimakodomo.wixsite.com/website

登壇者:佐々木千早妃(お結びコロコロ~お茶の間~/小松島市)、山本恵美(子育て応援隊!こども食堂NARUTO/鳴門市)、三輪浩美(子ども食堂あいちゃん/鳴門市)、岩崎致弘(自然派こども食堂/海部郡)、原田尚子(つなぐこども食堂/美馬市)、山田未沙紀(つるかふぇ/阿南市)、脇景子(なると子ども食堂「わくわくキッチン」/鳴門市)、村﨑弘汰(ぽかぽか食堂/徳島市)、内村不二子(松茂子ども食堂/板野郡)、竹内昌夫(XOXOこども食堂/徳島市)

※こども食堂名五十音順

ファシリテーター:湯浅 誠(特定非営利活動法人全国こども食堂支援センター・むすびえ理事長)