神奈川県

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ゆっくりと確かな信頼関係を育む、みんなの居場所

「公開ワークショップ 話そう!広めよう!食べるだけじゃない!?こども食堂で起きていること」in 神奈川 開催レポート

全国47都道府県で実施している「公開ワークショップ 話そう!広めよう!食べるだけじゃない!?こども食堂で起きていること」。18回目の開催地は神奈川県。2024年7月28日、神奈川こども食堂・地域食堂ネットワークの主催により、おだわら市民交流センターUMECOにて開催されました。神奈川県のこども食堂の数は486カ所。神奈川県は都市部から郊外まで、多様性に富んでいます。神奈川こども食堂・地域食堂ネットワーク山崎由恵さんから、今回は横のつながりを更に深めたいと特に県西エリアの方を対象に実施したとのご挨拶をいただき、ワークショップが始まりました。

登壇者の方から印象的なエピソードを伺った後に、グループに分かれて食堂実践者の方それぞれのエピソードを共有したり、こども食堂が果たす役割や価値を語り合いました。

自然な関わり合いが生まれる場所、それがこども食堂

本ツアーで実施するワークショップでは、こども食堂の運営者のみなさんに、1人ずつ 「やっていてよかったと感じるエピソード」「忘れられないエピソード」を伺っています。どのエピソードも、ハッとさせられたり、心温まったりするものばかり。エピソードの一端をご紹介します。

子どもの声に耳を傾ける大切さ

NPO法人未来経験プロジェクト・朝ごはんこども食堂(平塚市)堤園子さん:

ある男の子の近くに座ってご飯を食べようとしたら、その子が固まってしまってご飯を食べられなくなったことがありました。その子にとって、大人は安心できる存在ではなかったのですね。良かれと思ってやったことでしたが、それは大人の側だけの思いだったのだと気づかされました。以来、挨拶しても返事をしてくれず、ようやく返事をしてくれたのは半年後。それから少しずつ距離を縮め、今では時々連絡をくれる仲になりました。気づけば、10年来の付き合いです。振り返ってみると、大人に安心感を持てない子が来てくれたこと自体が奇跡のようだと思います。拒絶はされましたが、意思表示ができることは子どもにとって大切なこと。こども食堂にはいろいろな大人がいて、一人ひとり接し方が違う。積極的に話しかける人もいれば、そっと見守っているタイプの人もいますよね。子どもが自分で距離感を選べるからこそ、来続けてくれたのかもしれません。自分が何をしたいかではなく、子どもたちがどうしたいのかをまず聞くこと。その大切さを学んだ出来事でした。

テキスト, ホワイトボード

自動的に生成された説明
NPO法人未来経験プロジェクト・朝ごはんこども食堂(平塚市)堤園子さん

他愛ない会話がつくる信頼関係

菜の花ダイニング(川崎市)佐藤由加里さん:

子どもの素直な感想が聞けるのは、それがどんな内容でも嬉しいものです。以前、手作りドレッシングの材料のマーマレードをいつもと違うものに変えたことがありました。すると、子どもには苦みがあって食べにくかったようで、はっきりと「まずい」と言われたことがありました。感想を言ってくれたのは、いつもこども食堂に来ていた5,6人の常連の女の子たち。逆においしいときには、「おいしい」と直球で伝えてくれます。おいしくても、そうでなくても、この人たちには本当のことを伝えて大丈夫だと思ってくれているのが嬉しいですね。ほかに、将来はコックになるのだと言って、食堂で渡しているレシピを全部家で作っているという男の子もいました。その子も好き嫌いを隠さず伝えてくれます。家では、親から「行儀よく食べなさい」と言われることもあるけれど、こども食堂では、普通に食べているだけで「えらいね」と褒めてもらえます。何気ない会話を交わしながら、一緒にご飯を食べるだけで、温かい気持ちになります。みんなが安心してご飯を囲めるのがこども食堂の良いところだと思います。

ホワイトボード が含まれている画像

自動的に生成された説明
菜の花ダイニング(川崎市)佐藤由加里さん

気づけば運営側。自然につながるバトン

地域のお茶の間研究所さろんどて・ほんそん子ども食堂(茅ヶ崎市)早川仁美さん

現在、小学校の高学年で、赤ちゃんのときから来てくれている兄弟がいます。その子たちが小さかった頃はコロナ禍前で、大学生たちが子どもたちの見守りをしてくれていました。見守りは再開できていないのですが、その代わりにその子たちが小さな子どもたちと遊んでくれています。それだけではなく、初めて来た参加者にこども食堂を案内したり、ルールを説明したり、とても頼もしい存在。誰かに言われたわけでもないのに、自主的にやってくれているのが嬉しいです。こども食堂では、こうして初対面でも自然に関わり合いが生まれていきます。ご飯を食べるときも相席なので、他の家族とも話がしやすい。ぐずっている子がいたら手を貸してあげたり、「大丈夫だよ」と声をかけたりする光景をよく目にします。お母さんたちも「迷惑をかけないように」と気を張ることなく、楽な気持ちでいることができるのではないでしょうか。大人も子どもも、みんなでこども食堂をつくっている雰囲気がとてもいいなと感じています。

ワインを飲んでいる男性

低い精度で自動的に生成された説明
地域のお茶の間研究所さろんどて・ほんそん子ども食堂(茅ヶ崎市)早川仁美さん

こども食堂同士のつながりが、運営者の力に

登壇者から印象に残っているエピソードを伺った後は、4、5人のグループに分かれて、それぞれのこども食堂で起きた印象的なエピソードについて話し合いました。また、こども食堂の役割や価値についての意見交換も行いました。終了後に行った参加者アンケートに寄せられた声の一部をご紹介します。

――こども食堂の多様な活動に関する具体的なお話が聞けてよかった。

――県西部地域のこども食堂運営者とお会いでき、横のつながりができた。

――悩んでいることに、共感できて安心した。

――参加者の熱い思いを聞けて、これからがんばろうと思った。

――こども食堂の活動について、深掘りして考えることができた。

こども食堂を体験しよう!

今回は、こども食堂を訪れたことがある方なら誰もがうなずける温かいエピソードが共有されました。日常にこども食堂があることの豊かさを感じられるお話だったのではないでしょうか。レポートを読んでくださった方も、「食べるだけじゃない」を体験しに、お近くのこども食堂に参加してみてはいかがでしょうか。

神奈川県でこども食堂の活動に取り組まれているみなさん、ワークショップへのご協力を誠にありがとうございました。

【開催概要】

「こども食堂公開ワークショップ 話そう!広めよう!~食べるだけじゃない!?こども食堂で起きていること」in 神奈川

開催日:2024年7月28日(日)15:30-18:00

開催場所:おだわら市民交流センターUMECO

主催:神奈川こども食堂・地域食堂ネットワーク

共催:全国こども食堂支援センター・むすびえ

登壇者:早川仁美(地域のお茶の間研究所さろんどて・ほんそん子ども食堂/茅ヶ崎市)、佐藤由加里さん(菜の花ダイニング/川崎市)、堤園子さん(NPO法人未来経験プロジェクト・朝ごはんこども食堂/平塚市)

ファシリテーター:米田佐知子(神奈川こども食堂・地域食堂ネットワーク)、三島理恵(全国こども食堂支援センター・むすびえ)