みんなの物語が交差する、誰もが主役になれる場所
「公開ワークショップ 話そう!広めよう!食べるだけじゃない!?こども食堂で起きていること」in 愛知 開催レポート
こども食堂10周年記念全国ツアー「公開ワークショップ 話そう!広めよう!食べるだけじゃない!?こども食堂で起きていること」。
全国47都道府県でワークショップを開催しよう!という本ツアー、第6回目の開催地は愛知県。2023年3月5日、あいち子ども食堂ネットワークと一般社団法人愛知子ども応援プロジェクトの共催で、今池ガスホールにて行われました。
今回はこれまで開催した都道府県の中で最も規模が大きく、対面70名、オンライン参加10名、合計80名の方にご参加いただきました。構成もいつもと少し変更し、前半では5つのこども食堂運営者から印象に残ったエピソードを伺い、後半ではグループに分かれて意見交換を行いました。
現在愛知県には約300のこども食堂があり、新規開設も増えています。他の地域団体との連携や企業からの支援も活発で、地域の繋がりづくりや困窮した家庭への支援など多くの役割が期待されています。その活発な活動ぶりを反映して、会場は運営するみなさんの熱気で溢れていました。
それでは、今回も登壇者のみなさまが実際に経験したエピソードをもとに語られた、「食べるだけじゃない」こども食堂の魅力をご紹介します。
誰にとっても居場所になる!こども食堂
本ツアーで実施するワークショップでは、こども食堂の運営者のみなさまに、1人ずつ「やっていてよかったと感じるエピソード」を伺っています。どのエピソードも、ハッとさせられたり、心温まったりするものばかり。特に印象的だったエピソードを抜粋してご紹介します。
こども食堂は第二の実家
八社ちいきの食卓わいわい食堂(名古屋市) 田中和快さん:
「帰る場所があるって最高」。つい一昨日、今は大阪で働いている子が名古屋に戻ってきた際、帰りの新幹線でこうツイートしてくれました。その子は幼い頃に両親と離れて、児童養護施設で育ちました。出会ったのは7年前。当時私は、夜回りをして繁華街を徘徊している若者を保護しているNPOの事務所でこども食堂のような活動をしていました。具体的には週に一度、事務所にいる若者と共にご飯をつくって食べる、という内容です。彼とはその事務所で出会いました。 一度、その活動に来たのが彼だけだった日があり、二人で食事に行ったことがありました。そこから急に距離が縮まったことを覚えています。以来ずっと縁が続き、大阪で暮らすようになった今も、こども食堂の開催に合わせて名古屋に帰ってきます。彼がこども食堂に来続けたのは、やはり居場所を求めていたからだと思います。もしごはんを食べたいだけなら、施設で食べることができたはず。先日のツイートは、帰る場所がなかった 彼に、帰りたくなる居場所をつくれたことを実感させてくれる出来事でした。こども食堂が彼にとっての実家になっているのかもしれません。
続けるからわかる子どもの成長
サンクテーブル(半田市) 澤田恵子さん:
こども食堂に3年間通い続ける中で、一度も笑顔を見せたことのない子がいました。ずっとみんなで気にしていたのですが、夏祭りで浴衣を着つけてあげたとき、初めて笑顔で「ありがとう」と言ってくれたのです。スタッフからその報告を聞いたときは、嬉しかったですね。それから少しずつ関係が出来て、高校受験の時にはみんなで応援して、お弁当作りの練習にと一緒に卵焼きを焼いたりもしました。今でも高校の帰りに寄ってくれて、この前は「ただいま」と言ってくれたそうです。
こども食堂は多くの方の支援で成り立っています。支援してくださる方たちの思いを利用者に伝えて、利用者の「ありがとう」を支援者に返す、私たち運営者はその媒介をしているように思います。だから、みなさんの思いを汲む感受性がスタッフにはとても大切なのです。先ほどの女の子の変化も、彼女の思いを見逃さないスタッフがいたからこそ起きたように思います。これからもたくさんの方の気持ちが行き交うこども食堂をつくっていきたいですね。
60代になって初めてできた自分の居場所
いちほし小町(岡崎市) 月東佳寿美さん:
最近来られた元ヤングケアラーのボランティアの方がいます。その方は、シニアとなった今なお、母親の介護を担っており、ずっと家族をケアし続けているのですね。ボランティア活動には地域包括支援センターの方が、この方自身の生きがいをつくれるようにと繋いでくださいました。
ボランティアの内容は盛り付けなど配膳のサポートで、その方がずっと家の中でやってきたこと。過去のことを振り返るきっかけとなり、これまでのことを私たちに話してくださることもあります。伺っていると、初めてそうした時間が持てたのかなという印象がありました。
私は「みんなの居場所があなたの居場所だよ」という思いをもって今までやってきました。この方は遠方にも関わらず休まずきてくださっていて、こども食堂に来ることが励みになっているようにも感じます。私たちも、彼女がボランティアを続けていけるようにサポートしていくつもりです。
やり方は自由。でも共有できる思いがある。
後半のグループディスカッションでは、それぞれの悩みや解決方法について意見交換しました。どのグループも話が尽きないほど盛り上がりました。その感想の一部をご紹介します。
――みなさんの話を聞いていて、運営者の悩みの深さを再認識しました。今日のように相談したり、事例を共有できたりする場が増えるといいなと思います。
――運営者やボランティア、そして利用者、それぞれが主人公になれる場がこども食堂であると改めて感じました。
――これまでは食育の視点を大事に運営してきましたが、こども食堂にはまったく別のやり方もあり、それぞれの良さがあることに気づきました。
――グループ内で「いつまでこども食堂をやるか」という質問が出ました。すぐに答えは出ませんが、やり続けることで形が見えてくるのではないかと感じました。
こども食堂を体験しよう!
ワークショップ最後のグループディスカッションのシェアでは、ご自身が運営するこども食堂の経験をたくさんの方が披露してくださいました。こども食堂に関わる人の数だけ、物語があるのですね。このレポートをお読みのみなさまも 、「食べるだけじゃない」を体験しに、ぜひお近くのこども食堂に足を運ばれてみてはいかがでしょうか。
愛知県でこども食堂の活動に取り組まれているみなさん、ワークショップへのご協力を誠にありがとうございました。
【開催概要】
「こども食堂公開ワークショップ 『話そう!広めよう!』~食べるだけじゃない!?こども食堂で起きていること」in 愛知
開 催 日:2023年3月5日(日)13:30-16:30
開催場所:今池ガスホール 9階 プラチナルーム(オンライン参加あり)
主 催: あいち子ども食堂ネットワーク、一般社団法人愛知子ども応援プロジェクト、特定非営利活動法人全国こども食堂支援センター・むすびえ
登 壇 者:月東佳寿美(いちほし小町/岡崎市)、澤田恵子(サンクテーブル/半田市)、田中和快(八社ちいきの食卓わいわい食堂/名古屋市)、藤原直子(ぷちの輪おてら横丁/西尾市)、平野真弓(みずほ みんなの食堂/名古屋市)※こども食堂名五十音順
ファシリテーター:湯浅 誠(特定非営利活動法人全国こども食堂支援センター・むすびえ理事長)