明るい明日へ一歩踏み出す、みんなの居場所
「公開ワークショップ 話そう!広めよう!食べるだけじゃない!?こども食堂で起きていること」in埼玉 開催レポート
こども食堂10周年記念全国ツアー「公開ワークショップ 話そう!広めよう!食べるだけじゃない!?こども食堂で起きていること」。
全国47都道府県でワークショップを開催しよう!という本ツアー、第3回目の開催地は埼玉県。2022年10月2日、一般社団法人埼玉県子ども食堂ネットワークとの共催で、土呂こども食堂にて行われました。また今回は初めて会場の様子をYouTubeで配信しました。
(YouTubeはこちらをご覧ください)
埼玉県子ども食堂ネットワークには現在179のこども食堂が登録されています。しかし、こども食堂の数は地域によって差があり、少ない地域ではまだまだ認知が広がっていないのが現状です。一方で、プレイパークや子どもの学習支援の活動と連携されているなど、こども食堂から多彩な活動が広がっていることも埼玉の特徴のようです。
今回も登壇者のみなさまが実際に経験したエピソードをもとに、「食べるだけじゃない」こども食堂の魅力を語ってくださいました。
やっててよかった! こども食堂
本ツアーで実施するワークショップでは、こども食堂の運営者のみなさまに、1人ずつ「やっていてよかったと感じるエピソード」を伺います。今回はその後、登壇者と参加者のみなさんで「いいな」と思ったエピソードに投票を行いました。
どのエピソードも、ハッとさせられたり、心温まったりするものばかり。優劣をつけるものではありませんが、特に得票数の多かったエピソードを抜粋してご紹介します。
子どもボランティアと共につくるこども食堂
さいたまこども食堂(さいたま市) 本間太一さん:
私たちが運営するこども食堂では、小学生の子どもたちにボランティアをお願いしています。毎回違う子がボランティアに入り、一緒に調理をしたり、弁当を配布したりしています。コロナ禍で全国一斉休校になった際、人と接することや外出に恐怖を覚え、学校が再開されても登校できなくなってしまった子がいました。お母さんから話を聞いて、その子をボランティアに誘ってみたところ、本人もやる気になってくれて。何度かボランティアを経験するうちに、運営する大人たちや他の子どもたちとの交流が楽しめるようになり、最後は再び学校に通うことができるようになったのです。運営では、親も周囲の大人も一緒に成長を見守ることを大切にしています。
子どものためだけではない、親子の居場所
志木のまいにちこども食堂(志木市) 山下悦子さん:
夏休みに毎回お昼を食べに来る女の子がいました。友達と待ち合わせをして来るはずが来なかったり、一人でふらっと来たりするので、少し気になっていた子でした。その子が夜のこども食堂が終わった後に、裸足で泣きながら歩いていて、スタッフが保護したことがあったのです。女の子を引き渡す際、初めてその子のお母さんと顔を合わせました。同じ学年の子を持つ母でもあったスタッフが話を聞くと、誰も知り合いがいないとのこと。言葉数も少なく、お母さんのことも心配だったので、その後はお母さんも一緒にこども食堂に誘ったり、他のお母さんたちも交えて出かけたりしていたそうです。ある日、「その女の子が夏休みの終わりごろに転校することになった」とスタッフが伝えてきたのですが、確認してみると引っ越しは明日とのこと。その日も昼ご飯を食べに来ていて夜まで時間があったので、急遽お別れ会を開きました。当日は、女の子のお母さんも来てくれたのですが、表情が見違えるほど明るくなっていました。最後に、お母さんから「遊びに来てくださいね」という言葉を聞いたときは、とても嬉しかったです。
多世代のチームでつくる大規模こども食堂
こども未来食堂マイカ(草加市) 浜園浩美さん:
いろいろな年代の人がいて、規模も大きいのが私たちのこども食堂の特徴です。1回400~500ぐらいの食事を用意しています。それを70代80代の人や大学生が10人ぐらいで一緒に調理していて、半分は男性です。学校給食ぐらいの量があるので、鍋を混ぜるのも力仕事ですね。
ある時、調理している方のご主人が病気で亡くなったことがありました。それでも次の月にはまた来てくださり、「いつもと変わらないこの場所があってよかった」と話してくださったのが印象的でした。
会場には400人も来るので、密にならないよう配慮する必要があります。そこで、4カ所にじゃんけんなど簡単なゲームを設置して、全部回ったのちにお弁当を渡すことにしました。こうした仕組みは保育園の園長をしていたメンバーが中心になって考えています。最近はみんなで集まれる機会も減ったので、お母さんたちにも好評です。ゲームを回りながら笑顔になっていく親子を見ると、こちらも嬉しいですね。会場が温かい気持ちで包まれていくのを感じると、私もやっててよかったと心から思います。
子どもの明るい未来を照らす場所
多種多様なこども食堂の存在、そして実際の運営者の声を聞き、参加者のみなさんからも熱い感想が寄せられました。一部をご紹介します。
――子どもが未来に向けて元気に進むきっかけをつくっているのだと感じました。
――子どものボランティアは小学校からの要請で受け入れたことがありますが、続けていくのは難しかったです。続けるためにさまざまな工夫をされているのだと思いました。
――運営しているこども食堂では、コロナ禍でお弁当配付やフードパントリーが中心になっていました。実施できる回数が増え、繋がりが作りやすくなったことはありますが、今日のお話を聞いてもっといろいろなことを考えていきたいと思いました。
――こども食堂は子どもが信頼できる大人と繋がることができる場所だと思いました。
――「来てくれた子どもたちが、仕事でいない自分の親を尊敬することができるように配慮して接している」というお話が心に響きました。
こども食堂を体験しよう!
どの登壇者もこども食堂を通じてさまざまな体験をされ、親子の成長を見守り、地域コミュニティに尽力されていることが伝わってくるワークショップでした。レポートを読んでくださった方も、「食べるだけじゃない」を体験しに、ぜひお近くのこども食堂に足を運ばれてみてはいかがでしょうか。
埼玉県でこども食堂の活動に取り組まれているみなさん、ワークショップへのご協力を誠にありがとうございました。
【開催概要】
「公開ワークショップ 話そう!広めよう!食べるだけじゃない!?こども食堂で起きていること」in埼玉
開催日:2022年10月2日(日)10:00-12:00
開催場所:土呂子ども食堂
主催:一般社団法人埼玉県子ども食堂ネットワーク、特定非営利活動法人全国こども食堂支援センター・むすびえ
登壇者:櫻井敬子(久喜きっちん・こすもすこども食堂/久喜市)、浜園浩美(こども未来食堂マイカ/草加市)、本間太一(さいたまこども食堂/さいたま市)、山下悦子(志木のまいにちこども食堂/志木市)、田村信征(羽入の杜みんなの食堂/羽生市)、瀬戸山いづみ(はらいっぱい食堂/秩父市)、上蓑礼子(ひだまりこども食堂/川越市)、両角小夜子(わ・和・輪の会こども食堂/朝霞市)
※こども食堂名五十音順
ファシリテーター:湯浅 誠(特定非営利活動法人全国こども食堂支援センター・むすびえ理事長)