鹿児島県

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多様性が生み出す相乗効果

「公開ワークショップ 話そう!広めよう!食べるだけじゃない!?こども食堂で起きていること」in 鹿児島 開催レポート

全国47都道府県で実施している「公開ワークショップ 話そう!広めよう!食べるだけじゃない!?こども食堂で起きていること」、第15回目の開催地は鹿児島県。2024年2月12日、かごしま県民交流センターにて開催されました。

鹿児島県には多くの離島があることや、南北の距離が600kmという地理的な特徴から、県の支援ネットワークに寄せられた食材等の分配や配送に時間がかかるという課題を抱えていました。さらに地理的な要因は、ほかのこども食堂の様子が見えづらく、運営者同士がお互いの活動を知り活性化していく手段を持ちづらいという状況を作っていました。

もっと横のつながりを強め、こども食堂がもつ多様な価値を共有しあってほしい。食堂運営の悩みにぶつかったときにも、互いに相談し合える関係が構築されていたら心強いのではないか。そんな想いで今回のワークショップを開催しました。

当日は主催者の呼びかけに、鹿児島県の各地からオンラインも含め106名の参加者が集まりました。

登壇者のみなさまに、実際にこども食堂で出会った人たちとの印象深いエピソードや食堂の魅力について語っていただきました。

まだ見ぬ未来を描く場所、 それがこども食堂

本ツアーで実施するワークショップでは、こども食堂の運営者のみなさまに、1人ずつ「活動していてよかったエピソード」を伺います。どのエピソードも、気づきがあったり、心が温まったりするものばかり。そのうちいくつかを抜粋してご紹介します。

成長と笑顔の連鎖

子ども食堂マーガレット(鹿児島市) 井手フキ子さん:

子ども食堂マーガレットは、おもに障がいのある子どもとそのご家族に利用していただこうと1年2カ月前に開設したこども食堂です。子どもたちが食事やその後のレクリエーションを楽しんでいる間に、保護者には普段ゆっくり味わえない食事を摂り、悩みごとなどを共有し励みになる場にしてもらえたらという想いで始めました。

1年経って、子どもたちに少しずつ変化が表れてきています。以前は餅つきに及び腰だった子も積極的に参加し、自分の席について食べることができなかった子が、座って食事を摂れるようになったのです。決まりごとも守れるようになってきました。ある小学4年生の男の子は、料理を作ってくれている職員のところに来て「美味しかったよ、先生ありがとう。またお願い」と言って帰るようになりました。思い通りに事が運ばないと大きな声を発していた子も、最近ではこども食堂に来る年下の子どもたちの面倒を見るようになってきました。子どもたちの笑顔や成長する姿を見ていると、職員もやりがいを感じます。毎回ボランティアで来てくださっている方の存在も励みになっています。

子ども食堂マーガレット(鹿児島市) 井手フキ子さん

こども食堂で受け継がれる夢

森の玉里子ども食堂(鹿児島市) 岩川昂平さん:

森の玉里子ども食堂に高校1年生のときからボランティアで参加し、まもなく7年になります。初めてこども食堂に手伝いに来たとき、調理を担当している方の当時小学校5年生の娘さんと話をしたのを覚えています。中学校に入学すると、彼女は部活が忙しくなり、こども食堂に顔を出す機会が減っていきました。しかし高校に進学し、久しぶりに顔を出してくれたとき、彼女は私が初めてこども食堂に来たときの年齢に追いついたことに気づき「今ならいろいろなことができる。お手伝いしていかなくては」と話してくれたのです。

私を目標にしている、とも。

地域に世代を超えて受け継がれていく文化がある中で、私はこれまで自分は「受け取る側」だとばかり思っていました。高校生の頃は自分のことしか見えていませんでしたから。しかしこども食堂で多くの人にお祝いをしてもらったり、成長を喜んでもらったりという経験を重ねながら、いつの間にか自分も誰かの成長を喜び、次の世代に喜びを手渡す役割を担い始めているのだと感じるようになりました。あらためて誰かの目標になるような「地域のお兄さん」という立場を目指したいと思っています。

森の玉里子ども食堂(鹿児島市) 岩川昂平さん

小さな友情が生んだ奇跡 

細山田校区子ども食堂(鹿屋市) 上山晴美さん:

三世代交流ができるこども食堂を作ろうと、1年半前に開設しました。そこで出会った6年生の女の子の話です。

昨年夏、あるホテルの周年事業で、こども食堂を利用するこどもたちへ朝食バイキングの無償招待があり、1年生の孫と一緒に参加する機会がありました。当初参加する予定だった孫のお友だちが急に行けなくなってしまい、6年生の女の子を誘うことになりました。実は彼女はいろいろな事情を抱え、学校に行けない日が続いていたのです。しかしこの日は年下の子から誘われて断りにくかったのか、一緒に行くことに。

知らない人たちが多い中、孫は年上の彼女がいてくれたことが心強かったようです。帰りの車の中でもふたりでイベントでの話をしていました。

それ以来、女の子が学校に通う回数が増えたのです。給食もお友だちと食べることが増え、こども食堂を開いている日には必ず学校に登校し、帰りには寄ってくれるようになりました。イベントに参加して同じような年代の子どもたちと交流できたことや「お姉ちゃん」と頼ってくれる存在がいたことが、彼女の自信に繋がったのかもしれません。

こども食堂が子ども同士の交流を深め、登校が難しい子どもたちへの支援の場となれば嬉しいです。

細山田校区子ども食堂(鹿屋市) 上山晴美さん

こども食堂は安心できる居場所

こども食堂を運営している方々の声をうけて、参加者のみなさんで数人ずつのグループに分かれてディスカッションを行いました。その一部をご紹介します。

――子どもたちだけでなくボランティアの人たちもずっと通える場になっていて、こども食堂がみんなの居場所になっているのが魅力的だと思った。昨今のこども食堂の増加は、地域の居場所が増えていると考えると嬉しい。

――地域でも気になる子どもはいるが声をかけるのをためらっていた。差し伸べた手を受け取るかどうかはわからないが、声をかけ続けることが大切だと感じた。

――地域にハード面の拠点を持ちたいという想いはあるが、費用面が厳しい。自治体と協力して、助成金や補助金を活用するというのも一つの手段だと思った。

――こども食堂は、子どもたちの夢を聞いてあげる場所でもあると思う。もっと夢を語る子どもたちを増やしていきたい。

こども食堂で社会の課題に寄り添おう!

こども食堂を運営していると、さまざまな社会の課題に直面することがあるようです。しかし、こども食堂が子どもにとっても大人にとっても核となる存在であり続けるために、活動の幅を広げ、もっとチャレンジしていきたい、という運営者の皆さんの熱い志を感じることができました。

このレポートを読んでくださった方も、「食べるだけじゃない」を体験しに、ぜひお近くのこども食堂に足を運んでみてくださいね。

鹿児島県でこども食堂の運営に尽力されているみなさん、ワークショップへのご協力を誠にありがとうございました!

【開催概要】

「公開ワークショップ 話そう!広めよう!食べるだけじゃない!?こども食堂で起きていること」in 鹿児島

開催日:2024年2月12日(月)14:00-16:30

開催場所:かごしま県民交流センター(鹿児島県鹿児島市)

主催:かごしまこども食堂・地域食堂ネットワーク、全国こども食堂支援センター・むすびえ     

登壇者:松木薗利範(伊集院こどもふれ愛食堂/日置市)、福由美子(島想会食堂 笑人達/与論町)、上山晴美(細山田校区子ども食堂/鹿屋市)、井手フキ子(子ども食堂マーガレット/鹿児島市)、岩川昂平(森の玉里子ども食堂/鹿児島市)ファシリテーター:山角直史(全国こども食堂支援センター・むすびえ)