群馬県

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こども食堂で出会ったのは、新しい自分と無限の可能性

「公開ワークショップ 話そう!広めよう!食べるだけじゃない!?こども食堂で起きていること」in 群馬 開催レポート

全国47都道府県で実施している「公開ワークショップ 話そう!広めよう!食べるだけじゃない!?こども食堂で起きていること」第11回目の開催地は群馬県。2023年11月18日、群馬建設会館ホールにて開催されました。

現在群馬県内にあるこども食堂の数は約120カ所。中でもハイキングや夏祭り、フリーマーケットを合わせて開催するなど、居場所づくりの側面を持つこども食堂が多くあります。群馬県も子どもの居場所づくりとしての側面に期待を寄せており、補助金による支援も行っています。

一方、各市に目を移すと、こども食堂への理解には温度差があり、地域での理解を得ていくためにもネットワーク網を広げていくことが課題になっていました。行政、企業、社協の方々に貧困対策だけでないこども食堂の実情を知って、理解を深めてほしいとの主催者の呼びかけに、群馬県の各地から約70名の参加者が集まりました。

登壇者のみなさまに、実際にこども食堂で出会った人たちとの印象深いエピソードや食堂の魅力について語っていただきました。

行ってみたら違うものが見えてくる場所、 それがこども食堂

本ツアーで実施するワークショップでは、こども食堂の運営者のみなさまに、1人ずつ「活動していてよかったエピソード」を伺います。どのエピソードも、気づきがあったり、心が温まったりするものばかり。そのうちいくつかを抜粋してご紹介します。

みんなといっしょならできる!成長の場に

ユニバーサルカフェはーと(前橋市) 鈴木隆子さん:

2022年の8月から、子どもたちと一緒にお昼ご飯を作って食べるというスタイルのこども食堂を運営しています。あるとき、地元の福祉作業所からいただいたピーナツかぼちゃを使ってスープを作ることになりました。一般的なかぼちゃと違って皮が柔らかいので、子どもたちにも調理しやすいかぼちゃです。中には「包丁を持つのが怖い」と言ってなかなか取り掛かれない未就学の男の子もいましたが、みんながやっている様子を見て、最終的には自分で包丁を持ってかぼちゃを切ることができました。しかもその男の子、これまでに家でスープを飲んだことが一度もなかったそうなのです。ところが美味しそうにスープを飲み干し、おかわりまでする様子に、同伴されたお母さんもとても喜んでいました。

この場所には、未就学児から中学生まで幅広い年齢の子どもたちが集います。周りの子どもたちからの刺激を受けて、新しいことにチャレンジしてみようという気持ちが湧くのはこども食堂の良いところなのではと思います。

ユニバーサルカフェはーと(前橋市) 鈴木隆子さん

変わったのは子どもたちだけじゃなかった!

こどもの食堂び~ば~(太田市) 岩下幸江さん:

今まで子どもの支援に関わる仕事をしたことはありませんでしたが、テレビで子どもの貧困について知り、自分にもできることをしようとこども食堂を始めました。開設して2年半、自分の周りの人たちが変わっていくのを実感しています。

第三者的な立場で傍観していた夫は回を重ねるごとにとても協力的になり、こども食堂の日にはゴルフの誘いも断るようになりました。娘も毎回スタッフとしてかかわってくれるようになり、ボランティアスタッフは、さまざまな提案をしてくれるようになりました。特筆すべきなのは、参加してくれる子どもたちの変化です。はじめの頃は、こども食堂に来てもご飯を食べるだけでスタッフと交流を持とうとしなかった子どもたちが、段々と挨拶をしてくれるようになりました。こども食堂の外で会ったときにも手を振ってくれるまでに心を開いてくれるようになったのは、嬉しい変化です。

今ではスタッフとして参加してくれている子どもたちも2名ほどいて、朝9時から私たちの手伝いをしてくれています。「ルールを守れるとスタッフ側の仕事もできる」という特別感はほかの子どもたちへの刺激にもなっており、成長の機会にもなっているのを感じます。

こどもの食堂び~ば~(太田市) 岩下幸江さん

わが子の新しい一面を発見したお母さん

ゆめみるこどもキッチンYUMEKO(前橋市) 丸山妙美さん:

もともとわが家には近所の子どもたちが遊びに来てくれていたのですが、もっと広い場所で子どもの居場所をつくれたらいいなと思い、近くの公民館を借りてこども食堂を始めました。普段はピザやおにぎりなど、夕飯前のちょっとしたおやつになるものを一緒に作って食べる活動をしていますが、料理ではなく「夜に星空の下をみんなで歩こう」というイベントを企画したときのことです。ライトを片手に真っ暗な夜道を歩くイベントで、怖がる未就学の子どもたちをどのようにして連れて行くのか、どの道を選んで進んでいくのかを、大人は口を出さずに子どもたちに任せてみました。

このとき最年長だった5年生のAくん。実は学校で物を壊してしまったり、勝手に帰宅しようとしたりといった行動が指摘されていた子でした。でもこの日、Aくんは自分が最年長だったことを意識していたようで、怖がる小さな子たちをまとめ、行く先で意見が割れたときには多数決を取って決めようと提案するなど、素晴らしいリーダーシップを発揮してくれました。私にとっては、それが日頃こども食堂で見るAくんの姿そのものでしたが、Aくんのお母さんから「見たことのない姿を見られて嬉しかったです」とその日の夜にラインで連絡が入りました。ご家族にAくんの新しい一面を発見してもらえたことで、私も嬉しい気持ちになりました。こども食堂にはお母さん方がボランティアでお手伝いをしてくださることもあります。ぜひご自分のお子さんの普段と違う様子も見に来てほしいなと思います。

ゆめみるこどもキッチンYUMEKO(前橋市) 丸山妙美さん

こども食堂は可能性を広げてくれる空間

こども食堂を運営している方々の声を受けて、参加者のみなさんで4人ずつのグループに分かれてディスカッションを行いました。その一部をご紹介します。

――自分たちもこども食堂をやっていて、つい先日収穫体験をしてきたところ。子どもたちの普段は見えない新しい部分を見ることができて、よい経験になった

――こども食堂を始めようと思っているが、子どもが自分で包丁を持って料理をして、苦手を克服したという話に心を打たれた。食を整えれば笑顔が出てくると思う。そんなこども食堂を作っていきたい。

――町役場で仕事をしているので、応援する立場として広報活動などを通して、これからも多くの方にこども食堂の取り組みを知ってもらいたい。

――知ったり体験したりすることで人は大きくなっていくが、こども食堂で誰かが誰かの活躍できる場を作ってくれていて素晴らしいなと思った。人と人がつながることで無限の可能性が広がり、子どもたちも未来に希望を感じるようになるのではと思った。

こども食堂で未来を描こう!

このほかにも、こども食堂で、地域の人々や運営者がいきいきと活躍している様子を聞くことができました。こども食堂が閉じた空間ではなく、地域社会の中で人々の可能性を広げる場所になっていると感じられる時間になりました。

このレポートを読んでくださった方も、「食べるだけじゃない」を体験しに、ぜひお近くのこども食堂に足を運んでみてくださいね。

群馬県でこども食堂の運営に尽力されているみなさん、ワークショップへのご協力を誠にありがとうございました!

【開催概要】

「公開ワークショップ 話そう!広めよう!食べるだけじゃない!?こども食堂で起きていること」in 群馬

開催日:2023年11月18日(土)13:30-16:00

開催場所:群馬建設会館ホール(群馬県前橋市)

主催:こども食堂ネットワークぐんま、全国こども食堂支援センター・むすびえ     

登壇者:堀越勝徳(こちら、学校前食堂/高崎市)、岩下幸江(こどもの食堂び~ば~/太田市)、鈴木隆子(ユニバーサルカフェはーと/前橋市)、丸山妙美(ゆめみるこどもキッチンYUMEKO/前橋市)、月橋章(よりきど子ども食堂/大泉町)

※こども食堂名五十音順

ファシリテーター:古賀恵子(全国こども食堂支援センター・むすびえ)