熊本県

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地域だからできる 一人ひとりが活かされる場所

「公開ワークショップ 話そう!広めよう!食べるだけじゃない!?こども食堂で起きていること」 in 熊本 開催レポート

こども食堂10周年記念全国ツアー「公開ワークショップ 話そう!広めよう!食べるだけじゃない!?こども食堂で起きていること」。

全国47都道府県でワークショップを開催しよう!という本ツアー、12回目の開催地は熊本県。2023年11月19日、グランメッセ熊本にて開催されました。

熊本県のこども食堂は現在約170カ所。年々増加傾向にあり、この日もこども食堂を運営されている方から、これから始めたい方、活動に関心のある方まで約140人の方にご参加いただきました。今後も小学校区単位で少なくとも1カ所の開設を目指し、こども食堂への認知と理解が広まることが期待されています。

それでは、今回も登壇者のみなさまが実際に経験したエピソードをもとに語られた、「食べるだけじゃない」こども食堂の魅力をご紹介します。

レストランのテーブルに座っている人たち

低い精度で自動的に生成された説明

利用者も役割を担い、一緒につくるのがこども食堂

     本ツアーで実施するワークショップでは、こども食堂の運営者のみなさまに、1人ずつ「忘れられないエピソード」を伺っています。どのエピソードも、ハッとさせられたり、心温まったりするものばかり。特に印象的だったエピソードを抜粋してご紹介します。

誰かを喜ばせることが活力になる

多世代交流和やか食堂(阿蘇郡小国町) 波多野毅さん:

私たちのこども食堂は1人暮らしの高齢者が多い地域にあり、0歳から90歳まで幅広い世代の参加者がいらっしゃいます。数年前、85歳ぐらいのおばあちゃんが「参加して幸せだった」と話されたことがありました。その方も1人暮らしなので、多世代交流ができる場に幸せを感じられたのかもしれません。一方で、その言葉からはどこか「普段はそうではない」というニュアンスが感じられ、お年寄りへの接し方を改めて考える機会となりました。その後、しばらくの間は、お料理の準備はスタッフのお料理の先生が中心にしていたのですが、今では地域のおばあちゃん達が中心になってするようになってきました。おばあちゃんたちが時々ご自身で作られた料理を持ってきてくださるのを見て変えてみたのです。すると、先ほどのおばあちゃんも元気を取り戻すようになりました。私たちはお年寄りに対して「何かしてあげなきゃ」と思いがちですが、誰かの役に立つことが人を元気にするのだと、おばあちゃんに教えられた出来事でした。

テーブル, 男, 座る, フロント が含まれている画像

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多世代交流和やか食堂(阿蘇郡小国町) 波多野毅さん

自分らしくいられる安心安全な居場所

楡木子ども地域食堂なごみ(熊本市北区) 渡邉和代さん:

中学生が日頃抱いている思いや考えを発表する「少年の主張」で、こども食堂での経験を「人生の転換期」と話してくれた子がいました。小学生から不登校だったその子は、中学2年生の時に知り合いの紹介で、夏休みの学習会に来るようになりました。学習会では朝から夕方まで、小中学生の子どもたちが一緒に過ごしています。午前中に勉強した後は、みんなで畑に出て野菜を収穫し、全員で昼ごはんを作ります。来た当初はなじめない様子でしたが、通い始めて10日が経つ頃、それまでは送迎してもらっていたのが、自分で自転車をこいで来るようになりました。活動の中では特別扱いはせず、他の子と同じように接し、得意の絵を活かして、メニュー表づくりをお願いしていました。役割を与えられ、話したくないことを探ろうとする人もいないことで、次第にここが彼女の居場所になっていったようです。数カ月後には転校を決めて、中学に通えるようにもなりました。それから時が経ち、お母さんから「少年の主張」県大会への応募用映像が送られて来たのは、ちょうど私たちがコロナ禍で活動について悩んでいた時期。彼女が「こども食堂は自分の居場所」と語る姿を、みんなで涙して見たのを覚えています。「これからも続けよう」と励まされる印象的な出来事でした。

テキスト, ホワイトボード

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楡木子ども地域食堂なごみ(熊本市北区) 渡邉和代さん

地域だからつくれる誰もが輝ける舞台

子どもも大人も食堂 ぽぴカフェ(熊本市南区) 森高麻里さん: 

ご自身の体調が悪く、お弁当をとりに来られているお母さんがいらっしゃいました。お話を聞くと、中学生の娘さんは不登校で、ずっと家で絵を描いているとのこと。よかったらこども食堂のキッチンのある小屋で個展をしませんかと提案してみました。その後、下見に来た時はずっと下を向いていたのですが、後日たくさん絵を持ってきてくれて、紹介文も付けて展示することができました。すると、最近はギターを弾くことが好きだと話してくれたのです。そこで、趣味でベースをやっている夫と、音楽療法をされている方と3人で演奏会をやろうと誘ってみました。最初は一緒に練習することさえ緊張していたものの、だんだん夢中で演奏するように。娘さんのそんな様子を見て、お母さんの方も元気になっていったように思います。娘さんが練習を重ねる中、おじいちゃん、おばあちゃんや学校の先生まで、たくさんの方を誘われていました。そして演奏会当日。多くの方が集まり、その子も立派に演奏をやり遂げました。そのときの目の輝きは忘れられません。その日はその子にとっての「キラキラ記念日」。地域だからできた、温かい時間になったと思います。

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子どもも大人も食堂 ぽぴカフェ(熊本市南区) 森高麻里さん

みんなが求めてる繋がり、それをつくるのがこども食堂

登壇者から印象に残っているエピソードを伺った後は、5,6人のグループに分かれて、感想を話し合いました。こども食堂運営者の方がいるグループでは、実際の運営と照らし合わせ、より具体的な話を聞き合う貴重な時間となったようです。終了後に行った参加者アンケートに寄せられた声の一部をご紹介します。

――運営者の方々がこども食堂を「子どもが育つ家庭」と考え、子どもたちに丁寧に接していらっしゃることがわかった。

――こども食堂をやりたいという思いがますます強くなった。

――こども食堂は食事を提供するのではなく、人との関わりを提供するものという意見に共感した。

――こども食堂の目的は、あくまで生活困窮者の支援だと思っていたが、登壇者のエピソードを聞いて、それだけではないことに納得。子どもから高齢者までの居場所や、つながりをつくる支援になることが理解できた。

こども食堂を体験しよう!

今回も多様なエピソードから、改めてこども食堂の価値を感じる1日となりました。このレポートをお読みのみなさまも、「食べるだけじゃない」を体験しに、ぜひお近くのこども食堂に足を運ばれてみてはいかがでしょうか。

熊本県でこども食堂の活動に取り組まれているみなさん、ワークショップへのご協力をいただき誠にありがとうございました。

天井, 屋内, 人, 民衆 が含まれている画像

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【開催概要】

「こども食堂公開ワークショップ 『話そう!広めよう!』~食べるだけじゃない!?こども食堂で起きていること」in 熊本

開催日:2023年11月19日(日)14:00-16:00

開催場所:グランメッセ熊本 大会議室 

主催:子どもから地域へ拡がれネットワーク(TSUDOUネット)、一般社団法人熊本県こども食堂ネットワーク、全国こども食堂支援センター・むすびえ 

協力:熊本県北部こども食堂ネットワーク

後援:熊本県、熊本市

登壇者:木原成美(いこいスペース∞こあ まるちゃん家/天草市)、森高麻里(子どもも大人も食堂 ぽぴカフェ/熊本市南区)、波多野毅(多世代交流和やか食堂/阿蘇郡小国町)、糸山公照(テンプル食堂くまもと/宇城市)、渡邉和代(楡木子ども地域食堂なごみ/熊本市北区)※こども食堂名五十音順

ファシリテーター:湯浅 誠(全国こども食堂支援センター・むすびえ理事長)