変化のきっかけを生む、こども食堂の力
「公開ワークショップ 話そう!広めよう!食べるだけじゃない!?こども食堂で起きていること」in 岐阜 開催レポート
全国47都道府県で実施している『公開ワークショップ 話そう!広めよう!食べるだけじゃない!?こども食堂で起きていること』、19回目の開催地は岐阜県。2024年10月13日、カラフルタウン岐阜内「カラフルパーク」にて開催されました。
岐阜県内のこども食堂は148を数え、子どもたちのためにアクションを起こす大人が増えて、さまざまな人のつながりが「子ども」を中心に動き始めています。同時に、子どもに限らず、孤食の問題を解消する第三の居場所として、地域のつながりをつくる場としての役割も期待されるようになってきました。「こども食堂フェスティバル」と題した公開型のイベントの一環として行われた今回のワークショップ。一般の買い物客や企業・行政の人たちにもこども食堂について知ってもらいたい。そんな想いからショッピングモールのオープンスペースという多くの人が集まる場での開催となりました。当日は会場にフードドライブ缶を設置したり、キッズスペースを作ったりして、はじめての人にも気軽に参加してもらえるような仕組みを作り、会場を盛り上げました。
登壇者のみなさまに、実際にこども食堂で出会った人たちとの印象深いエピソードや食堂の魅力について語っていただきました。
支え合いと成長の拠点、 それがこども食堂
本ツアーで実施するワークショップでは、こども食堂の運営者のみなさまに、1人ずつ「活動していてよかったエピソード」を伺います。どのエピソードも、気づきがあったり、心が温まったりするものばかり。そのうちいくつかを抜粋してご紹介します。
小さな手から広がる大きな交流
よっといで!@北地区(大垣市) 千先佳津恵さん:
毎年4月に、こども食堂のチラシを小学校に配付して周知を図っています。子どもの約束ごとは時間や場所があやふやになることがありますが、チラシがあることで保護者も子どもの行先が分かり安心して送り出してくれているようです。また、保護者も一緒に参加してくれることがあり、保護者同士が交流を結ぶ場になっているのを感じます。
以前、通ってくれている1年生の女の子が、学校に配布したチラシを見て、自分で画用紙に宣伝を書いてオリジナルの「こども食堂チラシ」を作ってくれたという話を保護者から聞きました。学校で配ってお友だちを誘ってくれているとのこと。どうやら一緒に来ていた女の子のお姉さんが、いつもこども食堂に友達を連れてきているのを見て、自分も真似をしたかったらしいのです。こども食堂のチラシを配ることが、お友達づくりのきっかけにもなっていると知って、可愛いなぁと思いました。私たちの食堂は比較的大きなこども食堂なので、来てくれる子どもたちの一人ひとりと毎回話をすることはできていませんが、これまで見かけない子どもの姿を見るたびに「友達が増えているな」とほほえましくなります。子どもたちの「社交の場」になっているのを感じて、設立当初の想いが少しずつ実現しているな、と感慨深い思いです。
こども食堂は「もうひとつの家族」
和っとひろば@西地区(大垣市) 松村麻里さん:
もともと3人で開いたこども食堂が今年で7年目を迎えました。来てくれるのは妊婦さんから90代までと幅広く、多世代交流の場になっています。また、朝は学校に通えない子どもや乳幼児とその保護者が、放課後は学校帰りの子どもたちが顔を出してくれます。定時制高校に通う生徒たちが登校する前に腹ごしらえに寄ることも。それぞれの生活リズムの中に、子ども食堂の時間が自然と組み込まれているようで嬉しく思います。
最近は子どもや保護者だけでなく、スタッフの居場所になっているのを感じています。現在ボランティアスタッフとして参加している70代の女性は、こども食堂で働き始める前は、ご主人を亡くしてしばらくふさぎ込んでいたそうです。社会福祉協議会の勧めでこども食堂に来てくれるようになったのは1年半前。今では朝10時から夕方17時まで、会場の準備をしたり子どもたちや保護者のケアをしたりと、いつの間にかこども食堂に欠かせない存在になっています。そんな彼女がよく言ってくれるのが、「こども食堂との出会いを天国の主人が繋げてくれた」ということです。私たちのこども食堂では、さまざまな年齢のスタッフが一つのテーブルを囲みながら和気あいあいと準備をします。決して無理をせず、できる人ができるときに来ればいい、というスタンスなので、スタッフにとってもお互いが安心できる大きな家族のようになっているのかもしれません。「私の居場所ができて嬉しい」という彼女の言葉は大きな励みになっています。
こども食堂は新たな一歩を支える場所
登壇者から印象に残っているエピソードを伺った後は、会場のみなさんに気になったエピソードや意見を伺う時間を設けました。また、こども食堂を運営するうえでの課題なども話し合いました。会場のみなさんの意見から一部をご紹介します。
――昨年5月からこども食堂をしているが、ほかの食堂の実情を知りたいと思っていたので嬉しい。今日のみなさんの言葉をパワーにして頑張っていきたい。
――2カ月前に立ち上げたばかりで、まだ小さなつながりしかないが、今後必要な方とつながっていきたい。来てくれた子どもたちにとっても、何かが変わるきっかけが見つかる場所になれば、という想いがある。立ち上げたことで満足せずに成長していきたい。
――こども食堂がどんなところなのか分からない中で今回の話を聴いた。皆の善意でやっていることも知って勉強になったし、それぞれにストーリーがあることに感動した。
また、「立ち上げるとき大変だったことを聞きたい」という会場の声に対し、登壇者からは「最初は失敗したらどうしようかと思っていたが、同じ地域で先に始めている方に『やってみないと課題は分からない』と言われ背中を押してもらった。集まってくれたスタッフからは、誰かのために何かをしたいと思っていたのできっかけを作ってもらってありがたい、と言ってもらえた」という返答がありました。
こども食堂できっかけをつくろう!
こども食堂の存在は、訪れる子どもたちや大人にとって成長と気づきの場になっているだけでなく、運営している人にとっても新たな一歩を踏み出すきっかけになっているようです。ワークショップでは、こども食堂という場を通して成長し続ける人たちの熱い想いを感じることができました。
このレポートを読んでくださった方も、「食べるだけじゃない」を体験しに、ぜひお近くのこども食堂に足を運んでみてくださいね。
岐阜県でこども食堂の運営に尽力されているみなさん、ワークショップへのご協力を誠にありがとうございました!
【開催概要】
「公開ワークショップ 話そう!広めよう!食べるだけじゃない!?こども食堂で起きていること」in 岐阜
開催日:2024年10月13日(日)12:00-15:30
開催場所:カラフルタウン岐阜1F「カラフルパーク」(岐阜県岐阜市)
主催:一般社団法人こどもがセンター、 全国こども食堂支援センター・むすびえ
登壇者:松好和子(いるかのこそだて/大垣市)、安藤明美(たけはな子ども食堂/羽島市)、麓英里(ちょっとよってみ/瑞穂市)、千先佳津恵(よっといで@北地区/大垣市)、松村麻里(和っとひろば@西地区/大垣市)※こども食堂五十音順ファシリテーター:小島寛太(全国こども食堂支援センター・むすびえ)